入居金1億円の老人ホームで強制退去?看護師が教える高級な老人ホームの医療の限界とは

去年あたり、「マツコ会議」で放送された、老人ホームが高級すぎると話題になりましたね。

その入居金はなんと「1億円」!!!

このような施設があることに皆さん驚いたともに、もしかしたら自分や家族も将来はあんな老人ホームへ入りたいという方もいるのではないでしょうか?

改めまして、私は現在総合病院で「退院調整看護師」として、入院から退院までのフォローをするような仕事をしている現役の看護師です。

そして私が担当するような方と言うと、

  • 介護保険を使っている
  • 退院後も医療ケアが必要
  • 認知機能の低下や体力の低下で今までの生活が困難
  • 施設へ入居中

などの退院後の生活に何かしら支援が必要な方ということになります。

このような方を、ご本人やご家族の意向を聞きがら、今までと同じような生活が継続できることを目指して退院できるようなサポートをしています。実際に表に出て活動をすることはすくないので、病院の影の存在みたいになっています。

そのような私達が退院支援をする方の中には、「マツコの知らない世界」で紹介されたような「超・高級老人ホーム」へ入居している方も実際にいらっしゃいます。

しかし多くの方が「超高級な老人ホームを選ぶこと」について、少し考え方が違うこともあるようなので、ここで書かせてもらいたいと思います。

高級な老人ホームを選べば死ぬまで安心・贅沢は間違い!

あなたは「超高級な老人ホームを選べば、死ぬまで贅沢して暮らせて幸せ」だと思っていませんか?

はっきり言いますが、それ、間違っていますよ。

老人ホームをはじめとした介護施設では、強制退去や入居金にまつわるトラブルが後を絶ちません。

もちろん1億円を超えるような高級な老人ホームも同様です。

「老人ホームに入居すれば死ぬまで面倒を見てもらえる」と思うこと自体が間違いなんです。

老人ホームなどの施設選びで失敗する原因3つでも紹介しましたが、老人ホームへ入居後に予想される医療的な問題を考えておくことが重要といえます。

強制退居の理由と実際に施設を退居になった人とは

せっかく入った老人ホームでも、突然退居になることは普通にあります。

それはどのような時か、実際にあったケースを紹介したいと思います。

たんの吸引や点滴、注射の管理が出来ず、元の施設に戻れなくなる場合

たとえば、高齢者によくある

  • 肺炎
  • 脳梗塞
  • 転んで骨折

などで入院になったとします。

あなたはそのまますぐに退院できると思うかもしれませんが、高齢者の場合たった1週間の入院でも寝たきりになってしまうことも少なくありません。もともとの体の機能が低下したりすることで、こまめな痰の吸引が必要になったり、糖尿病が悪化して定期的なインスリン注射が必要になったり、口から食べられず経管栄養や点滴などの医療処置が必要になってしまうことも、病院ではよくある事なのです。。



これらの記事のように、元の施設で対応が出来ないような医療処置が必要になった場合には、施設を退去させられることも十分にありうるのです。

「看護師が24時間対応」の落とし穴

ここまで読んで「うちの施設は看護師が24時間対応だから大丈夫」と思ったアナタ、本当にそうでしょうか?

実際に退院調整をしていると、このような医療処置対応が原因で、施設側から再入居が無理と言われてしまうことがかなりあります。とはいえ、その施設は「看護師が24時間対応」の表記をしている・・・

なぜこのような、事態になってしまうのでしょうか?

その答えは
看護師が24時間対応=24時間常駐

ではないからです。

私は仕事柄、施設の看護師さんとは、日々やりとりさせてもらっています。しかし本当に看護師が24時間常駐しているような施設は一握りです。

日中は看護師がいても、夜間はオンコールと言って当番制で看護師が自宅で電話を持って待機しており、何か必要な時には施設に駆けつけるというシステムのところが多いのです。

確かにこれは24時間対応ではあるものの、すぐに看護師が対応できる常駐のシステムとは違います。

もし痰が詰まって、苦しくなってしまった場合、看護師が自宅から駆けつけるまでの間に、何か起こってしまったら・・・

そういったトラブルを考えると施設側も受け入れに対して難色を示すことも理解できますよね。

結核や血液疾患などで長期入院となった場合

施設には3か月ルールあるいは90日ルールというものが存在します。
「90日まではそのベッドや部屋を確保しておくけど、それよりも長い間不在になるとその席はなくなるよ」

というもの。

90日って長いようですが、ここで挙げた結核や血液疾患などの場合、90日を余裕で超える入院期間が必要になります。

もしこのような病気にかかってしまった場合には、長期の入院が必要となるため、施設での継続入居は不可能だと思っていた方がいいでしょう。

しかし諦めきれないという方には、「病院と施設のコネを使う」という方法もあります。

近くの連携している病院などでは、その病院の相談員(私みたいな立場のスタッフのこと)と施設ではある程度のつながりがあります。そして、その施設と強力なコネを持つ相談員がいることも事実。

もし本気でどうにかしたいと思うのであれば、少しの望みをかけて相談員に助けを求めてみてはいかがでしょうか?

認知症が悪化し、他の入居者に危害が及んだ場合

認知症は必ず進行します。

そして進行すると現れるのが、性格の変化や暴力性といった側面です。もちろん個人差があるので、すべての認知症の方が暴力的になるわけではありません。

しかし「ものとられ妄想」のように「財布がなくなった」などと言って、他人の居室に侵入したり、他の入居者に危害が及ぶような場合にはどんな施設も退去を迫られる可能性があります。

介護度が軽くなった場合

たまにあるのですが、要介護だった方がリハビリを頑張ったら要支援になったケースのように、介護度が軽くなる場合です。

結果的には本人の出来ることも増えてよかったねと言いたいところですが、この「要支援」と「要介護」の差は、施設や老人ホームにとってかなり重要といえます。

施設の基準で「要介護」の受け入れは出来るけど「要支援」はダメという施設も多いため、要支援になったとたん、退所を迫られたということもあります。

高い入居金は将来の補償にはならない

冒頭でも紹介したような入居金が1億円を超えるような老人ホームの場合、高いお金を払っている分、退居なんてありえないと思っていませんか?

確かに高いお金を払えばその後の安心を買えると思いがちですが、これは単なるサービス料であり、将来的な保障のためのお金ではないのです。

ですので、たとえ1億円の老人ホームでも、医療処置の対応が出来なくなれば入院や退去という扱いも当然起こりえます。もしその施設が「看取り対応」だったとしてもです。

看取り対応の落とし穴

「看取りまでしてくれる施設」は以前より多くなりました。

それを見て利用者は

「これでもう何も心配ないね。」

と思うでしょう。

でも私たち医療者の感覚は違います。

看取りと言っても施設の対応は様々です。

  • 施設専属の医師が常駐していて、医療設備が整っている施設
  • 嘱託(しょくたく)医といって、他のクリニックなどの医師が緊急時や定期的に訪問し対応をしてくれる施設

があり、常に専門の医師が常駐している施設では看取りはしやすいのですが、医師が常駐していない施設などでは一般的な「老衰」のような自然経過をたどる死期は看取れるけれど、突然の急変時や専門的な検査や治療が必要な場合にはその施設では対応できないため、病院へ入院するということになります。

実際に病院にはそのような患者さんが非常に多いです。

そして長期入院になり、施設に帰れるか、他の施設を探すかについて議論・・・

このような現状をぜひ、「看取り」まで考えて老人ホームへ入居させようと思っている方に知ってほしいと思います。

施設に戻れなくなった時の対応

もし入院や医療処置が原因で、元の老人ホームなどにもどれなくなってしまった場合にはどうすればいいのでしょうか?

まず最優先は「相談できるところに相談する」ことです。

入院をしているのであれば、病院の相談窓口。その他であればケアマネージャーや施設の相談員など。

これらのスタッフは専門的な知識を持っているとともに、上記でもちょっと書きましたが強力なコネを持っている人がいます。

かなりの裏話にもなりますが、施設では受け入れが出来ないと言われていた患者でも、その施設の経営者とつながりがある医師が直接交渉したところすんなりと受け入れOKになったというケースもありました。

つまり、個人で解決できないような問題は、まず大きな組織や専門スタッフに相談してみることをお勧めします。

しかしこれは奇跡にも近い確率。

ほとんどの場合、入居を断られててしまうとまた別の施設を探し直すということになります。

そうなるとまた一から入居金を支払うということに・・・

私は多くのご家族が不満をいいながら、別の施設をみつけて退院していくのを見送ってきました。

入居後も安心して永住するために出来ること

誰でも高いお金を払って納得して入居した介護施設には、できるだけ長くそこで暮らしたいと思いますよね。

ではどうすれば上記で紹介したようなトラブルに合わず、安心して長く住み続けることができるのでしょうか!?

入居前に施設職員の配置と退去条件を確認しておく

基本中の基本ですが、施設に入居前に契約書をよく読み、どのような時に対処になってしまうのかをよく知っておくことが大切です。

契約書なんてよく読まないという方(私もですが)も、トラブルに合わないためにも事前の確認をしっかりしておきましょう。

入居する本人の持病や健康状態を把握し、予後予測をする

これはほとんどの方がしていないことだと思いますが、医療者としてぜひ入居前にしておいて欲しいことです。

あなたは施設に入れようとするご本人の健康状態をどれだけ把握していますか?

本人の状態で把握しておくべき項目
  • 持病
  • 入院、手術の有無
  • 飲んでいる薬
  • 日常生活で出来ること出来ないこと(歩く、階段を上る、入浴する、トイレに行くなど・・・)

私は入院時に、ご家族からご本人様の状態を聞くことが多いのですが、聞いてみると

  • 「どこかに通院していたけど、何の病気かわかりません。」
  • 「薬は飲んでいたけど、何の薬かなんて知りません。」
  • 「2年前に脳梗塞をして当時はマヒが出ていたみたいですが、今では一人で暮らせてるんだから大丈夫でしょ。」
  • (最終的に・・・)「一緒に住んでいないのに、そんなこと知るわけないでしょ!。」と・・・

確かに遠方で状態を把握できないことも十分理解はできますが、本人のことを何も知らない状態で家族が勝手に老人ホームへの入居を決めてしまうのはとても危険です。

それは上記で紹介したようなトラブルのリスクが高いためです。

事前に本人の持病や、肺炎・脳梗塞などの繰り返している病気を事前に知る事が出来ていればこうなります。

また肺炎や脳梗塞になるかもしれない。

そうすると痰の吸引やリハビリが必要になる。

じゃあ施設での対応は可能かな?事前に聞いてみよう。

と行動が出来るようになります。

このように事前に、悪化しような持病や繰り返している病気を知っておくことで、入居後のトラブルを回避することにもつながるのです。なのでまずは、最低限、持病の有無と飲んでいる薬くらいは知っておくようにしましょう。

まとめ

長くなってしまいましたが、読んでいただきありがとうございました。

1億円の老人ホームはかなり極端ですが、だれしも高い入居金を支払って入居した老人ホームには長く住み続けたいと思いますよね。

ぜひそれを叶え、予測外のトラブルに合わないためにも、ここで書いたことを実践してみて下さい。