看護師のさやみんです。看護師にとってお看取りというのは、日常的な出来事であって、死までの流れや体の変化、診断書などの手続きなどのことは病院で働く看護師ならだれでも理解しています。

しかしご家族の立場になると、大切な家族の死に直面し、悲しみやショックなどでこのような死後の流れが全く分からないという方もたくさんいます。

そんなお看取りを終えた(またはこれからお看取りを迎える)ご家族に向けて、「病院で亡くなる」ということの一連の流れから、看護師サイドしか知らない死に化粧・死後処置のやり方、死亡診断書などの手続き方法、葬儀業者の手配、退院まで詳しく解説してみたいと思います。

  • これから家族のお看取りをしなければならない
  • 病院で亡くなった後の流れを知りたい
  • 死に化粧や死んだ後の点滴や管の処理方法が気になる
  • 病院から葬儀業者への流れ
  • 霊安室のリアル

など病院の流れや裏事情を知りたい方は必見です。

死ぬ時に医師や看護師は付き添わない

あなたは人間が亡くなる時には医師がそばに付き添ってなくなっていくのを見守っているというイメージを持っていませんか?

実は病院では亡くなる時に医師や看護師が付き添うということはほぼあり得ません。

たまたま医師がその場所にいたり、または意図的にその患者さんをお看取りしようと思って付き添っていない限り、亡くなる時に患者さんに付き添っている医療スタッフはいないということになります。

患者さんには心電図や酸素のモニターがついてるため、看護師はずっと付き添っていなくてもナースステーションから患者さんの心拍の変化などを観察しており、心拍が0になった、あるいは10~20などの不安定になったタイミングで主治医や当直医に報告をし、心拍が0になった後に病室へ訪問するといった流れになります。

さやみんさやみん

つまり、心電図のモニターが「ピーーーー」ってなり続けるあの状況のことですね。

そして、

  • 呼吸停止
  • 心拍停止
  • 瞳孔散大・対光反射の消失

この「死の三兆候」を医師が判断し、改めて「死亡診定」といった流れになるのです。

ですので亡くなる患者さんの中には、夜間で当直の医師が別の急変対応に追われている場合などは、心拍が停止して死亡したと思われていても、医師がその方のところまで来て死亡診定をするまでに時間がかかってしまうこともよくあります。

 

死化粧のやり方と家族の関わり

亡くなった後に顔にお化粧をしたり、お気に入りのお洋服に着替えたりするいわゆる死化粧のことを看護師などの専門スタッフの間ではエンゼルケアと呼びます。

このエンゼルケアは亡くなった後にご家族の了承を経てから看護師の間で行われることが多いですが、ご家族が希望した場合には一緒にこのエンゼルケアに入っていただくことも可能です。

しかしエンゼルケアに入る前には元々繋がっていた心電図のモニターや点滴おしっこの管、人工呼吸器などといった体につけられた医療器具などを外すという作業があります。この作業の間だけは家族はできるだけ入ってもらわないようにし、看護師のだけで行う、まさに看護師しか知らない裏作業ということになりす。

看護師しか知らないエンゼルケアの実態とは

では看護師しか知らないエンゼルケアの内容を紹介します。

まずは体中についた管などを全て外し、体を拭かせていただきます。装着していたオムツには排泄物が出ていることが多いので、その排泄物の処理をしなていきます。また亡くなった後は肛門自体が緩んでくるため、どうしてもそのままにしておくと消化管の中に溜まった便などが出てきてしまうことになります。

そのため、病院ではこのようなエンゼルケアといった物品の中に、お尻などに詰める綿というものが、注射器状になって存在するのです。楽天で普通に売っていました。

これを使って肛門から綿を詰めて、便が漏れていないようにします。

同様に、耳や鼻やお口からも体液が出てきたりするもあるので、体中の穴に綿を入れていく作業があるのです。これらの詰め物は全て看護師サイドで実施することになります。ご家族にはなかなか見るのがつらいような処置でもあるので、私達が行わせていただいているのです。

亡くなった後の服は白装束を着るの?

「亡くなった方が着る服」というと白装束を思い浮かべる方も多いのではないんでしょうか?

葬儀の時にはこの白装束を着ることが多いと思いますが、病院からはこの白装束を着ることはまずありません。病院にも、白装束というものは用意されていないと思うので、葬儀業者などのタイミングで白装束にお着替えするといった流れになると思います。

病院で亡くなった後は、手持ちのパジャマお持ちのお気に入りのお洋服で退院するということになります。

亡くなった後に着せる服は家族が選ぶことが出来る

病院で亡くなる際は、パジャマなどの普段着のことが多いと思いますが、エンゼルケアで体を拭いた後にはご家族の希望などを聞いて、家族の希望に沿った衣類に着替えさせていただいています。

亡くなった後のさまざまな服装
  • 今まで仕事で来ていたスーツ(更衣が大変でした・・・)
  • 浴衣(仁平のようなもの)
  • お気に入りの洋服

実際にこのような洋服を希望される方もいるので、ご家族や本人にとって思い出のある衣類を用意しておいてもいいですね。このような特別のお着替えをする場合には、是非、病棟の看護師に相談してみてください。

死化粧のセンスは看護師任せ

よく亡くなった後の顔を見ると、口紅が塗られていたり、ファンデーションが塗られていたりと綺麗なお顔に変化していることがほとんどですよね。

実はあの死化粧はエンゼルケアと一緒に看護師が行っています。使う化粧品は普通の一般の化粧品と一緒。病棟によっては、勤務している看護師の肌に合わなかったファンデーションを使っているという場所もありました・・・

基本的には男性でも生きているかのような表情に見せるために口紅を塗るようにしていたり、血行が良く見えるようなチークなども使用しています。

しかし、このような死化粧はほぼ担当の看護師のセンスによるため、中にはおかめのような顔になってしまうことも。

 

元々自分でメイクをしているような女性の看護師であれば、センスよくお化粧させていただくこともできるのですが、たまたまメイクセンスのないような男性看護師に当たってしまうと、このような亡くなった後の顔が残念な顔になってしまうこともあります。もしエンゼルメイクで不満があるようであれば、この後引き継がれる葬儀業者さんで手直ししてもらうこともできると思うので、ぜひ相談してみてください。

病院で葬儀業者は紹介してもらえるのか

病院で亡くなるとエンゼルケアまでは病院側で行いますが、その後の葬儀の手配などはすべて業者に依頼しなければいけません。

しかし、突然の死などで葬儀業者など何もツテがないようなケースもたくさんあります。「葬儀業者をどこに頼んでいいのか分からない」といった場合には、病院から葬儀業者を手配することも可能です。

病院には一応契約している葬儀業者はいるのですが、できるだけ患者さんのご家族側で自分たちに合った葬儀業者を探していただき、それでも見つけられなかった場合にのみこの葬儀業者を紹介していると言った形になります。

決して提携しているからと言ってセールスのように強制的に葬儀業者を勧めることはありませんので、ご安心ください。

もし葬儀業者をどこにしようか分からなかった場合には、ネットから簡単に費用の見積もりを出してもらえたり、希望を伝えることで自分たちに合った葬儀業者を探してもらうこともできるので、そういったサービスを利用してみてもいいかもしれません。

病院が葬儀業者を選ぶケースと家族がいない場合の対応

葬儀業者は基本的にご家族に選んでいただきますが、万が一身寄りがいなかったり、ご家族と何年もあっておらず音信不通の方が亡くなった場合には、病院で契約している葬儀業者を依頼することになります。

実はこのような身寄りがいない方のお看取りはとても増えているのが現状です。

そんな場合には事前に市町村などに相談をし、生活保護などを申請しておけばその担当者が手配をしてくれるなどの対応をしてくれることもあります。市町村などの自治体によって対応が異なるため、気になる方は問い合わせてみて下さい。

またこのような身寄りがない方を積極的に受け入れてくれたり、埋葬までを引き受けてくれるような法人団体も存在します。

病院ではこのような退院してから葬儀までの手配はしていませんので、葬儀をどうするかというところまではご家族が責任をもって考えていただきたいと思います。

葬儀業者を選ぶ時間は長くても半日が限度(例外もあり)

葬儀業者を依頼するにあたり、その葬儀業者がすぐに手配できるかというところも重要です。中には個人経営などで小規模な葬儀業者の場合だと既にどこか別の方の移送などで忙しくて、「すぐに病院に駆けつけてくれない」と言った場合もあります。

そういったケースの場合、「病院はどこまで待てるのか?」という疑問もあるかもしれませんが、私が経験した中では翌日という方がいらっしゃいました。

その方は海を越えてやってくるような家族でしたので、特別なケースということで病院側も了承したのですが、基本的にはせめて半日までの間ぐらいだと思っていた方がいいと思います。

亡くなった方をずっと置いておくと、病院の入院予定の方にも影響が及びますし、長時間ご遺体を置いておけるほどの設備もないのが現状です。

恋愛室って言った場所もありますがあんまり霊安室に安置するといったケースは少ないのが現状です

霊安室は実際には使われないことが多い

亡くなったご遺体を安置させる場所として「霊安室」を思い浮かべる方が多いと思いますが、病院では霊安室に移すことはほとんどないということを知っていますか?

実際に軽く10年病院で勤務している私でも、ご遺体を霊安室に安置したケースはたった2件。

  • 遠方から迎えに来るため長時間かかる場合
  • 剖検(亡くなった後の解剖)をした場合

この場合に私は霊安室にご遺体を移送させていただきました。

先程のケースのように国外からご遺体を迎えに来るような場合だと、時間もかかるため一旦ご遺体を霊安室に安置させていただくことになります。

このように病院から移動するまでの時間がかかるケースの場合と、死後の解剖などを行い、体が傷ついてるような形の場合には霊安室で安置することもあります。

つまり基本的には亡くなった後の患者さんは、葬儀業者に移送されるまでは病室で家族と待機してもらうのが基本です。

剖検(死後解剖)ってなに?AIとは何が違う?

先ほど霊安室に安置したケースに出てきた「剖検(ぼうけん)」というワードですが、実際に病院内で解剖が行われていることは知っていますか?

例えば状態が安定していると思っていた患者さんが急変して亡くなった場合や、死因が不確かな場合には、医師から「死因を特定するための検査・解剖」をご家族に提案することもあります。

そしてこの死後の画像検査(CTなどのこと)をAIと呼び、解剖をして体内を調べることを剖検というのです。別サイトですが看護師向けにこのAIと剖検についての記事を書いていますのでよかったら参考にしてみて下さい。

葬儀業者は病院のどこから出入りするの?

あなたは病院に出入りしていて、葬儀業者を見かけたことがありますか?

普通に出入りしているような患者さんと葬儀業者が出会ってしまうと、患者さんの不快感にも繋がりかねません。そのため病院には必ず葬儀業者用の裏口があり、亡くなった患者さんはこの裏口から出入りをするという流れになります。

ご遺体を運ぶ車についても、専用の出入り口に駐車しそこから移送するので、決して一般の患者さんには目撃目に入らないような配慮がされているのです。

必ず退院の時に持っていく何よりも重要な「死亡診断書」

業者の手配も終わり、亡くなった方のご遺体を連れて葬儀場なり自宅に帰るだけとなった時に忘れてはいけないのが死亡診断書です。

これは死亡診定をした医師が死因などを明記した書類であり、これを亡くすと大変なことになります。

例えばあなたが、普通にご遺体を乗せて道路を走っていて、そこで警察の検問などで捕まってしまった場合には、あなたは死体搬送などの罪に問われる可能性が出てくるのです。

さやみんさやみん

確かに死体を運んでたら犯罪だよね・・・でもどう見ても葬儀業者の車なら警察だってわかるんじゃない?

ナース

それだけじゃダメなの!ちゃんとこの死亡診断書を一緒に同乗する人が持つってことが大事なのよ!

このようにご遺体を搬送する際には、この死亡診断書を必ず移送する車に同乗する人が持っていなければいけません。ここは病院側も業者側も徹底して順守しているため、病院側から預かった死亡診断書の書類は大切に扱うようにしましょう。

退院時にお金を払わなければいけない?

亡くなって病院を出る際には退院という形になるため、入院にかかった費用を払わなければいけません。亡くなることが予測できてればいいのですが、予期せぬ急変や事故などで費用が全く準備できていないということもあると思います。

そういった時には病院窓口でその旨を伝えることで、後日落ち着いてから改めて精算することも可能です。亡くなったからすぐにお金を用意しなければいけないというわけではないので、落ち着いた後に病院の窓口で支払いをするようにしましょう。

葬儀が落ち着いたら同室の方には挨拶をした方がいいのか?

ご本人が今まで仲良く入院期間を過ごしていた、同室者へのご挨拶も気になりますよね?

中には葬儀などが落ち着いてから、同室者のところへ来て菓子折りなどを渡しながらご挨拶をしていくご家族もいらっしゃいます。ただ、そのような方はほんのわずかであり、基本的には亡くなった後はもうそのままというご家族の方が多いと言えます。

どうしても会ってお礼を言いたいという方であれば、このように葬儀が終わって落ち着いてからご挨拶に行くのがいいでしょう。

まとめ

病院で亡くなった後の流れについて、今回は紹介しました。

私たち看護師からしてみれば当たり前の流れでもありますが、ご家族からしてみると大切な故人をどのように扱われているのか不安があるかと思います。

私たち看護師は、亡くなった方でも1人の人間として尊重して扱い、亡くなった後でも丁寧にお声かけをしながらエンジェルケアを進めさせて頂いています。このお看取りについては、看護師にとっては「よくあること」でもあるのですが、何度経験しても慣れるということはありません。

その方の長い人生や家族があって、その中の最後の入院期間という短い間ですが、私たちが関わらせていただいたご本人様との思い出を振り返ると、涙もろい私お看取りの度に涙してしまうことも・・・

ぜひご家族は「病院には悪いから」と思うのではなく、何か心配なことや不安なことがあるのであれば気兼ねなく相談してほしいと思います。その人の最期をお見送りする、ご家族だからこそ、安心してご本人を送ってあげてほしいと思います。