
お願いだから病院に入院させて!!
そう医師に訴えてくる家族は少なくありません。私も日々そんな家族のお願いを聞いている一人です。
私は退院調整看護師と言って、医師からの説明に一緒に同席させてもらい、患者さん本人や家族の希望を聞きながら退院先の調整をしたりサービスを利用する手続きをすすめる仕事をしています。
ですので、本音ともいえる「介護のつらさ」であったり「自宅に帰ってくる恐怖」みたいなものをご家族から直接聞くことが多いのです。
今回はそんな家族の介護負担に関する悩みと病院の現状、さらにその対処法についてお伝えしていきたいと思います。
- 自宅で介護をしていて、辛くて限界。
- 入院中だけど、家族が自宅に退院するのが心配。
- 退院をもうちょっと先延ばしにしてほしい。
このようなご家族の参考にしてもらえればと思います。
病院は本人やご家族の希望で入院をさせる場所ではない
最初に厳しいことを書きますが、病院はご家族や本人の希望通りに入院を受け入れるような場所ではありません。
中には長年の付き合いやコネがあって、入院を快く受け入れてくれるような病院もあるかもしれませんが、少なくとも体調不良や急変などで駆け込むような急性期の病院では、そんな「入院のお願い」は通用しないと思いましょう。
私が勤務する病院でも医師が家族に
「ホテルだと勘違いしないでください」
と厳しく伝えていることもありました。
そうです、病院はホテルではないのです。
医師が診察をし、治療の必要があったり、状態が不安定で危険な状態などと判断した場合のみ入院の許可が出るのです。
では皆さんが自宅で生活することに悩む理由やその対処法について考えてみたいと思います。
入院・退院で悩む原因 3つ
私が患者さんやご家族に対応する中で、皆さんが「入院させて欲しい」「退院はもうちょっと待って」と思う理由はなんだと思いますか?
1:介護の不安
一番多いのが介護に対する不安です。
入院したら紙おむつが必要になることってあるの?!動けなくなってしまう高齢者の入院の怖さ
この記事にも書いているとおり、今までは自宅で元気に動けていた方でも入院中に体力がガクッと落ちてしまい
- 歩けない
- おむつが必要
- 少しボケる(認知症の進行)
などのように状態が変わってしまうことがあります。
というより、高齢者の多くはこのような経過をたどります。
しかしご家族は今まで通り、元気になって元の生活を送ることを当然のように考えているため
おむつを使うようになったり、リハビリが必要な本人の状態を目の当たりにすると
「こんな状態で家に帰ってきても無理、困る」
といった反応を示す家族が非常に多いのです。
また自宅で介護をしている場合には、日々のストレスが溜まり介護鬱の状態になってしまっている方も少なくありません。しかし病院では介護負担を軽減するための入院はしていないため、「ショートステイ」や「施設入居」などを早急に進めて行くことが重要になります。
その対処法についてはまた下記で説明していきます。
2:病気への不安
認知症やがんなどと診断されると家族の不安も大きくなり
- 「自宅で火の始末などの管理はできるのか」(認知症のケース)
- 「この先痛みなどの症状や急変が起こったらどうしよう」(癌などのケース)
- 「管を入れたまま生活なんて無理」(おしっこの管や消化器のドレーンなどを挿入した場合
- 「胃ろうや人工肛門などの管理が出来ない」
など、さまざまな病状や医療処置に対する不安を感じてしまうことも多くあります。
がんになっても一人暮らしはできる!?治療しながら自宅ですごす方法と入居できる施設とは
注射や点滴をしながらでも施設は入れる?受け入れ拒否されずに入所できる施設と基準とは
これらの記事では医療処置が必要になった場合の対処法を紹介しています。
このように病気などに対する不安が強い場合には「医療設備が整った施設」や「訪問看護」や「介護サービス」を検討することが必要です。
3:生活自体の不安(家庭環境や金銭面など)
自分で動けていて、元の生活にもどれそうな方の場合でも
- 一人ぐらしで家族が遠方にしかいない
- 収入がなく、治療などを継続していくのが難しい
などの生活面での不安を感じているケースも多くあります。
このような場合には「生活保護」の制度を利用したり、「見守りサービス」や「施設への入居」を検討した方がいいでしょう。
お金がなくて施設も自宅介護も無理!費用のことで悩んだらするべき3つのこととは
社会的な制度やサービスについての専門家に相談してみると、適切なアドバイスをもらうことが出来ますよ。
「入院したい」「退院しないで欲しい」と感じた場合の対処法3つ
では、自宅で生活をすることに対して悩みを抱えている場合にはどうしたらいいのでしょうか?
その対処法についてお伝えします。
1:介護保険のサービスを利用する・サービスを見直す
介護保険を利用せずに在宅で介護をしてきた場合には、介護保険の申請をして、必要なサービスを導入することが最優先になります。
サービスを利用する場合にはケアマネージャーがケアプランを本人や家族の希望をもとに作成してくれるため、デイサービスやヘルパーなどの在宅サービスを利用することが可能になります。
またもともと介護サービスを利用していた場合でも、家族の負担が増えていることをケアマネージャーが把握していなかったり家族が相談していなかったりすると、不適切なサービスをずっと継続してしまっている状態になります。介護が負担だと感じた場合にはケアマネージャーに相談し、負担が軽くなるようなサービスの調整をしてもらうようにしましょう。
相談をしているのに、何も変えてくれないようなケアマネは正直力量がないのかも・・・?
ここに書いてあるようなケアマネさんの場合には中止しましょう。
とにもかくにも、つらいと感じる現状を一刻も早く変えていくことが重要です。
ケアマネージャーや他の相談員(病院や地域にいる)などに積極的に相談していきましょう。
2:ショートステイやレスパイト入院を利用する
施設入居をするまではいかなくても、ショートステイやレスパイト入院で一時的に、自分が介護から解放される時間を作るというのも有効な方法といえます。
ショートステイは、施設へ短期間入所することで入居の手続きを踏まなくても、空き状況と施設での対応が可能であれば申し込むことが出来ます。これもケアマネージャーを通して申し込むことになるので、ケアマネージャーに相談してみましょう。
レスパイト入院というのは「入院」というだけあって、施設ではなく病院で一時的に入院し預かってもらうことです。
入院は冒頭でダメだって言ったじゃないか!という声も聞こえそうですが、あれは急性期のような一般病床のお話。
レスパイト入院を受け入れている病院には
- 療養型病床
- 地域包括ケア病棟
などがあります。
これらは主に医療的な処置を必要としていたり、病状が思い方を優先的に受け入れている場所なので、介護メインでは「ショートステイ」の利用がおすすめです。
3:施設への入居を決断する
家族の負担やストレスが限界だと感じている場合には施設へ入居させるという方法が一番の解決策になります。
しかしデメリットとしては「入居費用」が一番の問題点になるのではないでしょうか?
確かに施設のお金のことを考えれば、今までのように介護を我慢すれば経済的には生活が楽になります。
しかし介護のストレスでつぶされてしまえば本末転倒です。ご家族が元気でいられることが、在宅介護の前提でもありますので、つらい状況であるならば施設入居という選択肢を考えてみてもいいのではないでしょうか?
施設のことなんて何もわからない?
みんなそこからスタートしています。そして私たちがそのサポートをしていきます。
このサイトでも施設の種類について詳しく解説させてもらっていますし、ケアマネージャーや病院の相談員も施設を選ぶお手伝いは積極的にしてくれるはずです。
相談したからといって必ずしも紹介してもらった施設に入居しなければいけないということもありません。
まずはどんな施設に入れそうなのか、近くにどんな施設があるのかなどを調べてみることから始めてみましょう。
資料を取り寄せるには、施設の資料請求ができるサイトなどを利用することをおすすめしています。
はじめての方でも簡単に利用することが出来て、複数の施設の資料を一括で請求することも可能です。
ネットで資料請求できる施設の検索サイトって?人気のサイトをランキングで紹介
まとめ
入院させてほしい!退院は無理!感じた場合には、今までの現状を変える必要があるということ。
その現状を変えるためにはまずは身近な場所(ケアマネージャーや病院など)に相談してみるということが大切です。
私ら相談員はそういった方の悩みを聞き、解決するためのお手伝いをするのが仕事です。
私自身、退院したご本人やご家族から
「ありがとう!頼んでよかったよ」
この言葉がもらえることで日々頑張れているんです。
本人やご家族が不安を感じず、安心して暮らせる方法はないか?ぜひ一緒に考えっていきましょう。